「あっ、」
今まさにそれをグラスに注ごう、という絶妙なところで不二くんがわたしの手をつかんだ。
びんを持つわたしの手、それごと覆うように重なる不二くんの手。
「なに‥?」
ボトルのなかでゆらりと波をつくるあわーいピンク。
フランスのレモネードだというそれは、すこし重たいガラスボトル入りでスクリューキャップになっている。
みためがシャンパンみたいでとても可愛いのだ。
「キャップ、しまったままだよ」
「え?」
たしかに銀のキャップはしまったままだった。
炭酸がぬけないように、といちいちしめたのは自分なのにすっかりそんなこと忘れてしまっていた。
でも、それより恥ずかしいのは図らずもこんな白昼からカフェで手を握り合うという展開になったこと。
不二くんが目を細めて、しょうがない、って笑うとき、わたしはすこししゅんとするけれど
それ以上に、甘やかされている実感はわたしをしあわせで満たす。
「おちゃめさんだね」
ボトルを取り上げると、まるで高級なシャンパンみたいにうやうやしく注いでくれる。
ロゼピンクの炭酸がぱちぱちと細かい音をたててはじけた。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
「おんなじ色してるよ、」
とグラスの中身とわたしの顔を交互に指差して言うのでわたしはまた恥ずかしい。